向島デザイナーズ2019 報告
2019年度の「向島デザイナーズ」は、明治大学建築学科の「計画・設計スタジオ1」、芝浦工業大学建築学部「都市地域デザイン演習」と連動し、7月20日、28日に現地講評会として開催されました。
明治大学建築学科の「計画・設計スタジオ1」は、3年生96人が墨田区の高密な市街地の中に新しい小学校を建て替える課題に挑み、①墨田区立第三寺島小学校敷地に「保育園・児童館に隣接する小学校」、②墨田区立第四吾嬬小学校敷地に「木造密集市街地に隣接する小学校」、③墨田区立柳島小学校敷地に「公園に隣接する小学校」をそれぞれ計画・設計しました。いずれも現在の学級数や必要とされる教室や管理諸室等の面積要件が具体的に定められ、下記に示すように周辺地域との関係を十分に配慮しつつ、新しい小学校を提案することを求めた課題でした。
課題A:「保育園・児童館に隣接する小学校」(墨田区立第三寺島小学校敷地)
関東大震災後、くねくねしたあぜ道をそのままにして真っすぐで太い道路がつくられて急速に市街化した地域の小学校である。自然環境に恵まれているとは言い難いが、保育園や児童館が隣接し、多くの子どもたちが行き交う様子から「子ども銀座」ともいわれてきた。校地は狭いながらも、密集市街地における貴重なオープンスペースを生かした、コミュニティの中心を担う新しい小学校の提案を期待する。
出展者:高山徹也、生島知紗、青木麻緒、近藤愛海
課題B:「木造密集市街地に隣接する小学校」(墨田区立第四吾嬬小学校敷地)
戦前に建てられた長屋など下町の風景が色濃く残されている木造密集市街地が隣接しているが、留学生が学ぶ建築デザイン系の大学やIT系の専門職大学院の開設計画が進んでいる。本校は普通教室と同数の特別支援教室を配置し、インクルーシブ教育を率先して実践している学校ともいえる。これまでの地域の特徴を継承しつつ、新たな動きに対しても呼応する新しい学校建築を提案してもらいたい。
出展者:増田友太朗、渡邉麻里、新安萌音、成定由香沙
課題C:「公園に隣接する学校」(墨田区立柳島小学校敷地)
明治期の関東大水害と関東大震災と戦災を乗り越えてきた歴史ある小学校である。震災後に学校と一体的につくられた公園が隣接し、東側の緑道もあわせ、比較的に緑の多い景観を形成している。近くには錦糸公園があるが、小学校には防災や地域活動の拠点としての役割がますます増してきている。セキュリティに配慮しつつも、地域に対してどのように開くかを考えた新しい小学校の提案を期待する。
出展者:安達渓花、河田祥太、谷崎音花、鈴木裕香、虎戸望咲、山崎なつみ
6月1日(土)に墨田区立吾嬬第二中学校で開催された現地説明会では、向島学会の清水永子と副理事長と高原純子・理事が学生たちへ期待を込めて激励しました。それから7週間後の7月20日(土)に「向島デザイナーズ2019」が開催されました。会場になったすみだ生涯学習センター(ユートリア)の1階展示ホールには、大学内で選抜された14人の学生の提案作品が並びました。現地説明会での激励が功を奏したのか、例年以上に力作が並び、特に女性の活躍が目立ちました。展示された14人の作品は、7人の担当教員が受け持った班の選考会からそれぞれ2人ずつ選出したものですが、14人中11人が女性でした。
展示会は午後1時すぎから行われ、午後2時からは学生が一人ずつ、向島学会をはじめとした地元関係者に発表しました。それぞれ3分程度の発表の後に3分間の質疑応答の時間が用意され、活発な意見交換がなされました。
その後、所定の投票用紙を使って、参加した向島学会や墨田区の関係者が票を投じ、優秀賞を選定しました。その結果、最優秀賞は、新安萌音さん、優秀賞は、課題Aの近藤愛海さん、課題Bの成定由香沙さん、課題Cの谷崎音花さんがそれぞれ受賞しました。また、特別賞が贈られ、内から見た向島賞と芸術文化地域活動「楽の会」賞は谷崎音花さん、現代美術製作所賞は青木麻緒さんと虎戸望咲さんが受賞し、それぞれ表彰されました。
この一連の取り組みは、墨田区の区政情報番組「ウイークリーすみだ」で大きく取り上げられ、J:COMすみだと墨田区公式YouTubeで報じられました。
芝浦工業大学建築学部「都市地域デザイン演習」では、『木造密集市街地に立つまちに開かれたコミュニティ施設を内包する集合住宅』という課題が出題され、墨田区京島地区の木造密集市街地を対象として、学生たちが、まちの可能性を伸ばしていくための潜在空間 を対象エリアの中から発見し、敷地として設定する。設定した敷地において、潜在的なポテンシャルを 発揮させる『コミュニティ施設を内包する集合住宅』を計画しました。
7月28日(日)に一寺言問集会所で実施された「向島デザイナーズ2019」には、優秀作品9点がポスター展示されるとともに、パワーポイントによるプレゼンテーションが行われました。会場では、京島の新たな住まい方について熱い議論がなされ、投票の結果、優秀賞4点が選ばれました。